卒業生のみなさんへ

 第76期生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。

 Z世代と呼ばれるみなさんが入学した令和4年度、本校では「1人1台タブレット端末」がスタートし、学習指導要領の改訂で「総合的な探究の時間」が始動しました。みなさんは二つながらに1期生ということになります。

 iPadを授業や学校生活でどう活用していくか。総合的探究ではどんな活動に取り組めばいいのか。教員側も試行錯誤の毎日でした。デジタルネイティブならではのICT機器の知識と操作スキル。総合的探究の過程で見られた社会貢献や自己実現への強い意欲。Z世代のみなさんの特質に驚かされたり、教えられたりすることがたくさんありました。

 新型コロナの渦中で始まった高校生活と新しい学習環境の中で、みなさんが互いに支え合い、勉強や部活動に精いっぱい取り組んだ姿を私たちは知っています。みなさんの奮闘に心から拍手を送ります。

 戦後を代表する詩人谷川俊太郎さんが昨年、92歳で他界されました。みなさんも教科書で「二十億光年の孤独」「朝のリレー」など珠玉の作品に出会ったことがあるでしょう。きょう巣立っていくみなさんに、谷川さんの「卒業証書」と「生きる」という2篇の詩を贈ります。

 

『卒業証書』

 ひろげたままじゃ持ちにくいから/きみはそれをまるめてしまう/まるめただけじゃつまらないから/きみはそれをのぞいてみる/小さな丸い穴のむこう/笑っているいじめっ子/知らんかおの女の子/光っている先生のはげ頭/まわっている春の太陽/そしてそれらのもっとむこう/ 星雲のようにこんとんとして/しかもまぶしいもの/教科書にはけっしてのっていず/蛍の光で照らしても/窓の雪ですかしてみても/正体をあらわさない/そのくせきみをどこまでも/いざなうもの/卒業証書の望遠鏡でのぞく/きみの未来

 

『生きる』

 生きているということ/いま生きているということ/それはのどがかわくということ/木漏れ日がまぶしいということ/ふっと或るメロディを思い出すということ/くしゃみをすること/あなたと手をつなぐこと

 生きているということ/いま生きているということ/それはミニスカート/それはプラネタリウム/それはヨハン・シュトラウス/それはピカソ/それはアルプス/すべての美しいものに出会うということ/そしてかくされた悪を注意深くこばむこと

  生きているということ/いま生きているということ/泣けるということ/笑えるということ/怒れるということ/自由ということ

  生きているということ/いま生きているということ/いま遠くで犬が吠えるということ/いま地球が廻っているということ/いまどこかで産声があがるということ/いまどこかで兵士が傷つくということ/いまぶらんこがゆれているということ/いまいまがすぎてゆくこと

  生きているということ/いま生きているということ/鳥ははばたくということ/海はとどろくということ/かたつむりははうということ/人は愛するということ/あなたの手のぬくみ/いのちということ

 卒業証書の望遠鏡から、あなたの未来はどう見えていますか。

 対立と分断が急速に進むこの世界で、あなたは何を基軸に生きていきますか。

 卒業の日は、新たな人生の入り口に立つ日です。あなたがこれから進む道は、まだ誰も経験していない、あなただけの道。それぞれの舞台であなたらしさを発揮し、夢に向かって力強く歩んでください。

 どうしてもうまくいかず、途方に暮れる日もあるでしょう。そんなときは、高松中央高校を訪ねて私たちに悩みをぶつけてください。みなさんが背負った荷物を少しでも軽くするお手伝いができるはずです。もちろん、うれしい報告は大歓迎。私たちはいつでもみなさんのホームカミングを待っています。

 みなさんの未来にエールを送り、幸多かれと祈ります。       教職員一同